ストレスで白髪が増えるのは本当にあるの？
現役皮膚科医がストレスと白髪の関係を説明します
「ストレスで一気に白髪が増えた」という話はよく耳にします。実際に経験された方もいるかもしれません。
ストレスと白髪は、本当に関係しているのでしょうか。
答えはYesです。
最近、アメリカのハーバード大学での研究により、ストレスと白髪が関係しているメカニズムが、マウスによる実験で明らかにされました。
今回は、その研究結果をもとに、ストレスと白髪の関係性について解説します。
そもそもどうして白髪はできるの？
白髪ができるメカニズムについてまずはご説明します。
毛穴の奥には毛根があり、その毛根は毛包と呼ばれる袋状の組織に包まれています。毛包内には2種類の幹細胞があります。1つは、毛そのものをつくる「毛包幹細胞」、もう1つは、毛に色をつける「色素幹細胞」です。
色素幹細胞が活性化されると、それらの一部がメラニン細胞（メラノサイト）に変化して、メラニン色素を合成して毛を根本から着色します。
つまり、毛包幹細胞から成長する毛髪は、もともとは白髪であり、色素幹細胞が変化したメラノサイトからメラニン色素をもらうことで黒い髪になるのです。
ストレスを受けると体でどのようなことが起こるの？
人がストレスを受けると、体の中でどのような変化が起こるのでしょうか。
体の神経の1つに、自律神経というものがあります。自律神経は、人が生きる上で欠かせない、呼吸・血液循環・体温調節・消化・排泄・生殖・免疫などの機能を調整する働きをしています。自律神経は、自分の意志とは無関係に24時間調節を行っており、生命維持に欠かせない神経です。
自律神経は主に、交感神経と副交感神経に分かれます。
交感神経は、起きている時、緊張している時に優位に働く神経です。闘争・逃走反応の神経ともいわれます。
副交感神経は、寝ている時、リラックスしている時に優位に働く神経です。
ストレスを受けると、交感神経が優位に働くようになります。
ストレスによって白髪になるメカニズムは？
ストレスを受けると、交感神経が活性化されて、神経伝達ホルモンであるノルアドレナリンが体内で多く分泌されます。
今回、アメリカのハーバード大学でのマウスの実験による研究結果から、ストレスを受けると、交感神経の活性化により分泌されたノルアドレナリンの影響で、毛包にある色素をつくる色素幹細胞は過剰に反応した後、永続的に枯渇してしまうことが分かりました。
色素幹細胞が枯渇してしまうと、メラニン色素が再生できなくなるため、白髪になります。
ストレスで一気に白髪が増えるのは、このようなメカニズムによるものだということが明らかになりました。
ストレスとうまく付き合う生活を
現代社会でストレスを完全にゼロにした生活をすることは難しいです。
しかし、ストレスを増幅させず、ストレスとうまく付き合うこと、というのは生活の工夫次第で可能です。
ストレスとうまく付き合う生活の工夫として、以下をお勧めします。
①強いストレスを受けた時はリフレッシュする時間を多めに作りましょう。
強いストレスを受けた状態が長く続くと、体や心に負担がかかり、さらにストレスが増幅してしまいます。そのため、強いストレスを受けたと思ったら、体も心も切り替えて、いつもよりリフレッシュする時間を多めにとるようにしましょう。
リフレッシュの方法は、休養、運動、趣味など、ご自身に合った形でとることをお勧めします。
②十分な睡眠をとりましょう。
量・質共に良い睡眠をとることは、ストレスをためないために重要です。
睡眠時間、特に22時から2時の時間帯は、副交感神経が優位に働く時間帯と言われています。
ストレスによって交感神経優位な状態から切り替えるためにも、22時から2時の時間帯を含めて、目安6時間程度は睡眠をしっかりとるようにしましょう。
③適度な運動をしましょう。
適度な運動はストレス解消に効果的です。ストレスによって起こった筋肉の凝りや血流の滞りも、運動によって改善することが期待できます。
白髪になってしまったら
白髪が増えてしまった場合は、白髪をストレスに感じて余計にストレスを増やしてしまうことは避けましょう。
白髪が気になる場合は、自宅でのカラトリートメントやヘアマニキュア、美容院でのカラーリングなどで白髪を目立たなくする方法があります。
白髪を抜いてしまうと、毛根が傷ついて新たな毛が生えてこなくなる可能性がありますので、抜くことは避けましょう。
ストレス過剰は白髪増加につながる
ストレス解消が白髪もケアにもつながる
今回はストレスと白髪の関係について、最近の研究結果を交えて解説しました。
強いストレスを受けると白髪になるということが証明されたということは、ストレスとうまく付き合う生活は、白髪予防につながるということになります。
生活の工夫により、白髪を予防していくようにしましょう。